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高額化する不妊治療
<東西医学融合研究会通信>(20056月号)

◆不妊治療の年間費用は平均41万円
 
 検査や排卵誘発剤、腹腔鏡手術などの一般不妊治療には保険が適応されるが、体外受精・胚移植、顕微授精、胚凍結などの高度不妊治療には保険が適応されません。また、いつ妊娠するのか、見通しが立たないために、いくら費用がかかるかわからないという不安が大きいです。

 少子化対策として20044月に特定不妊治療助成事業が始まりました。「体外受精」と、1個の精子を針で卵子に注入する「顕微授精」に対して、不妊治療以外での妊娠の見込みがないか、極めて少ないと診断された戸籍上の夫婦に、一年度あたり10万円を上限に、通算2年まで助成金が支給されること決まりました。しかし、20049月の厚生労働省が実施した調査では、3県が「実施しない」または「検討中」とし、政令指定都市でも5市が「実施しない」と回答しており、自治体によるばらつきが目立ちます。
不妊治療を研究する白井千晶・早稲田大非常勤講師(生殖社会学)の調査で、不妊治療にかかる費用は平均年間41万円で、治療経験者の3割は高額な治療費を理由に中断したり、治療回数を減らした経験を持っていることがわかりました。
  調査は200312月にかけて、不妊に悩む人たちの団体を通じて行われました。年間の最高額は225万円で、不妊治療開始以来の治療費総額の平均は約153万円、最高額は1500万円でした。
 現在の治療の満足度については、「満足していない」、「あまり満足していない」があわせて39.1%に上り、約4割を占めています。不満の理由(複数回答)では(妊娠するなどの)、納得いく結果を出せない」が43.1%で最も多かったが、2番目は「費用」(19%)となっています。また、16.1%の人が「治療方針などを医師が十分説明しない」と回答しています。
 
 経済的な問題に加えて、不妊症治療には身体的、精神的、社会的、時間的負担が伴います。なかでも、結婚して子供をもうけることが当たり前であるという考えが、いまだに主流であること、そして、いつでも妊娠が可能といった技術の発展が生み出した幻想によって、精神的負担が大きくなってきています。不妊症治療中は、妊娠への期待と治療失敗という絶望が毎月繰り返され、自分で自分の生活や人生をコントロールできないと感じるために大変不安定な状態になります。そして、涙もろくなったり、イライラしたり、怒りっぽくなったりしても、多くの人が「私が精神的に弱いから」と自分を責め、さらに自信を失っていきます。
 
 不妊治療の現場では妊娠することが「良いこと」で、それ以外の価値はとかく認められにくいです。しかしそのような状況であればこそ、不妊治療を受けているカップルが幸せに生きるために、サポートする側の細やかな配慮がいっそう求められるでしょう。
 
全国初!国立大病院で高度な不妊治療を提供
2005103日、国立大病院では初めてとなる体外受精など、高度な不妊治療を専門に行う医療の拠点「生殖医療センター」が、山梨大学医学部付属病院に開設されました。
 「生殖医療センター」は、山梨大学医学部付属病院が中央診療棟の中に開設したものです。「生殖医療センター」では不妊治療としては一般的な排卵の誘発や人工授精のほか、より高度な医療が必要とされる体外受精や顕微受精、胚移植を行います。このため、診療室には最新の生殖補助医療機器が整備され、産婦人科の医師と看護師が常駐しています。
 国内では、およそ1千万組が2年以上妊娠しない状態、いわゆる不妊症で悩んでいるとされ、専門治療の提供が強く求められています。付属病院によると、山梨県内で現在、こうした高度な不妊治療を提供しているのはセンターを含めて3つの施設だけで、国立大病院としては全国で初めてです。
 
一人っ子政策の中国でも不妊症が問題
925日、国際婦人科医療専門家シンポジュウムが中国上海で開かれ、日本で初めて開設された不妊治療専科医院加藤レディスクリニック院長加藤修先生が「自然周期(クロミフェン周期)法」について講演を行いました。そのなかで、初めて「自然周期法」の治療を受ける患者さんは手術が成功してから治療費を支払うべきで、手術が成功しなければ、治療費を請求すべきではないと話したところ、この斬新な提案に対して、会場に集まった百名以上の医療関係者から大きな拍手が送られました。
  周知の通り、中国は人口の増加を抑制するため、厳しい産児制限制度=「一人っ子政策」を実施しています。これまで、避妊手術や人工流産が盛んに行われてきました。しかし近年、不妊症、または不育症の患者が増え、不妊治療を求める声が大きくなってきています。
 現在、全世界で不妊症患者は50008000万人と言われ、WTO(世界保健機構)は、不妊症を腫瘍、心臓及び脳の血管疾患に次ぐ、21世紀の第三の疾患として挙げています。
 中国では約1015%の既婚夫婦が不妊症、または不育症に悩まされています。そのうち、三分の一は男性側に原因があり、大多数は女性側の原因によるもので、不妊症は婦人科の一般的な疾患になってきています。
 江蘇省南京市婦女小児病院では、不妊症患者は婦人科外来患者の20%を占めており、生殖医療センターの李紅霞主任によると、不妊症の発生率が上昇する理由として、環境汚染、喫煙、晩婚、栄養失調による肥満または激やせ、薬物、仕事と生活のストレス、頻発流産、性感染などが考えられるとのことです。
 通常、女性の年齢は3034歳のカップルは、7組中1組、女性の年齢は3540歳の場合、5組中1組、女性の年齢は4044歳の場合、4組に1組が不妊症と統計が出ています。着床率は40歳以降から大きく下がるため、李紅霞主任は、不妊症患者の治療の適齢期は35歳までで、35歳以降、女性の卵巣の機能が徐々に衰え、染色体異常や奇形児が生まれる確率が高くなると強調しています。